「はい、これ。今日から持って行きなさい」
ママから手渡されたのは携帯電話。ジュニアケータイってやつだ。
最近、知らない人に声をかけられたり、車に無理矢理乗せられそうになる事件が立て続けに起きた。
防犯のためということで、今日から学校に携帯電話を持って行ってもよくなったんだ。
でも授業中は電源を切って、先生に預けなくちゃいけないけれど。
プゥルルル♪
短い着信音が鳴った。
「ママからメールかな」
携帯電話の液晶画面には、メール受信一件という表示が出ている。
Fromけいたいでんわのめーる
To翔太
Subよろしくな
「誰だよ!」
けいたいでんわのめーる?!
【きょうから、きみのけいたいでんわでせいかつすることになった、けいたいでんわのめーるっていうんだ。よろしくたのむよ】
【だれ?】
【けいたいでんわのめーるだよ】
返信しながら携帯電話の時計に目をやると、すでに八時を過ぎていた。
「あっ! もうこんな時間だ。遅刻しちゃう!!」
僕は首から提げた携帯電話を、ストラップごとランドセルに押し込んで走り出した。