何度も、淳は、私に優しくキスをした―\r
キスが、こんなに、幸せな気持ちになるものだなんて、遠い記憶の片隅に葬り去られて居た。
でも、淳は、なかなか、先に進もうとしなかった。
「あっちゃん・・・?」
「ん・・・?」
「やっぱり・・・、私の事、軽蔑してるの?腫れ物に触るみたいなの・・・、嫌・・・。」
勇気を振り絞り、私は、淳の核心を探った。
「そんなんじゃ無いよ。汚いとか、腫れ物に触るとか、そんな風に思って無いって。でも・・・、ほんとに、これで良いのかなぁ?って・・・。」
「嫌なら・・・、こんな事を自分から、あっちゃんに言わないよ・・・。」
「解ってる・・・。」
淳は、ベットから立ち上がり、玄関の隣に有る、冷蔵庫の方へ行き、扉を開けると、新しいミネラルウォーターのペットボトルの蓋を開いた。
「だったら・・・。」
「俺は、男らしく無いのかも知れない。普通の男だったら、お前の事、押し倒して、やっちゃうだろうな。でもな・・・、香里?俺は、普通のその辺に居る、男と同じ様にお前の事を見てねぇんだ。セックスなんてしなくても、もっと、お前との失われた時間を取り戻したい。お前、セックスをさせ無かったら、男が逃げてくんじゃねぇか?って、勝手に思ってんだろ?」
「・・・、うん。」
「やっぱりな。さっきも、言ったけどさ・・・。そんな奴は、お前の事を、本当に好きじゃねぇんだ。マジで好きになった女は、大事にしよう!って思うのが、男なの。」
淳は、私の心の奥まで、全て見透かして居た―\r
「あっちゃんの事、信じても良い?」
「良いよ。香里ともっと一緒に居たい。もっと、話をしたい。もっとキスしたい。お前を抱きたいって思うのは、それが全部出来たって思った時かな?そこまで、全部出来る前に、お前に、振られただろ?そう言う方が、男は、引き擦るんだぜ?」
淳は、下を向いたまま、静かに笑った。
そんな淳を見た瞬間、私は、淳に掛け寄り、淳の背中に抱き付いた。
「あっちゃん・・・。背中、温かいね・・・。」
「火照ってるのかもな。お前、疲れただろ?もう、寝な・・・。それとも、飲み足り無いなら、もう少し飲むか?」
「眠たくも無いし、お酒もいい・・・。ただね・・・、もう少し、あっちゃんに抱き締めてて欲しい。五年分、抱き締めて欲しいの・・・。」
「あぁ・・・。」
淳と、朝まで抱き合って居た―\r
飽きる程に―\r
そして、五年分の想いを取り戻すかの様に―\r