――山田君。山田 太郎君。君は、現場の責任者だという自覚はあるの?!――
――はぁ。自分は、認識不足でした。
申し訳ありませんでした。――
俺が係長という立場で、現場作業責任者としての仕事をする様になってからというもの、
俺より3歳年上で、工場長という立場のその男は、毎日俺に説教じみた事を語りやがった。
某有名大学出身だという事で、社長からの信望も厚いと自負している、
何とも生理的に受け付けない相手であったし、
理屈っぽい、その物言いが、俺の疲れた心を逆撫でするのだ。
――短い間でしたが、どうもお世話になりました。――
世話になったなんて思っちゃいない。
本音と建前を使い分けなければならない事を学んだのは、いつの頃だっただろう。
わざとらしく引き留める奴らもいたが、それも、恐らく本音ではないだろう。
彼らもまた、使い分けているのだ。
俺がそうである様に。