ザクッ
や…め…て…くれ…
ザシュッ
なんなんだよ…おま…え…
理解できない状況が僕を蝕んでいく…
「ガハッ…」
深々と腹に刺さるナイフ―
僕の上にまたがる見知らぬ女―
その女は狂ったように僕の腹にナイフを突き立てる…まるでそれこそが僕の罪だというように…
何度も…何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もナンドモ―\r
一章「カブタと僕」
ジリリリリリリッ!
目覚ましの音がけたたましく四畳半の部屋に鳴り渡る。
「もう…朝か…」
ごそごそと僕は布団からはいだし、鳴りっぱなしの目覚ましを止めた。
「ふわぁ〜あ…」
昨日の゙夢゙のせいで僕は若干寝不足だった…
あの゙夢゙は半年前…丁度カブタを買ってからは見なくなったというのに…
「これじゃまた学校で居眠りしちゃうな…」
僕ははあっとため息混じりで呟き制服の袖に腕を通した。
「純兄ちゃん遅れちゃうよー!」
妹の沙耶の声が一階から僕の部屋まで聞こえた。
沙耶は僕と2歳離れた妹で今年から僕の通う青嵐高校へ入学した。
志望理由は近いからっというなんともまぁ何も考えてない有り様である。
「ま…人のこといえないけどね…」
ふうっ朝食変わりのコーヒーを飲みながら一息つく。
「なに独りで呟いてんの…」
呆れたのか沙耶はやれやれという顔でこちらを見て
「そんなんだから高3になっても彼女出来ないんでしょーが」
さすが我が妹、痛いところをついてくる。
しかしここで黙ってしまえば兄の威厳がそこなわれるというものだ。
「兄ちゃんだってその気になればな…!」
「根暗で高校になった今でもカブトムシを大事そうに飼ってる昆虫オタクがその気になればできるって?」
「む、むぅぅ…」
沙耶の言葉は僕の心をえぐりとるぐらい的を得てた。
実際この歳になるまで一人としか付き合ったことがなくその上一週間で捨てられるという無惨なものだった…軽くトラウマである
「ていうか時間やばっ!私先いくから!」
慌てて出ていく沙耶に続き僕も家を出る。
時刻はもう8時をまわっていた