僕達は、駅で待ち合わせをして、園内へと向かう。
エリンはめずらしくスカートをはいている。
「ねぇねぇ、かわいい?」
何度も聞いてくるエリンに僕は
「かわいいよ。」
と頭をなでる。
ライアン達は先の方を歩いている。
「エリン、今日は奈々ちゃんいるから、名前は間違えるなよ。」
「わかってるよ♪陽斗♪」
明るく返事をしてスキップをする。
「なぁ、陽斗〜。」
ライアンが向こうで呼ぶ。
「なんだ?」
「とりあえず、別行動しないか?閉園の時にここに集合ってことで。」
「そうだな〜。そうするか。」
そして僕達は別行動をとる。
「二人きりなら、名前間違えなくてすむね♪」
エリンは嬉しそうに腕を組んできた。
「ハーンもライアンも今日はカッコイイね♪なんか企んでるの〜?」
(なかなか鋭いな…。)
「何にもないよ。ただ、エリンがオシャレするなら…って思っただけだよ。」
「ふぅ〜ん…。」
不思議そうに見つめる。
(だからその上目使いはやめてくれ…。ドキドキする…。)
エリンは、僕の腕を引っ張り、
「早く行こう♪」
と笑顔で歩く。
そんなエリンに今日の僕は緊張がたえない…。
あんなに無邪気なエリンを見ると、小さい頃を思い出す。
僕のせいで片耳が聞こえなくなり、それでも僕を『好きだ』と言ってくれる彼女は、僕にとって掛け替えのない存在になってる。
彼女にとってもそうであってほしい…。
「ハーン♪これこれ♪これ買って♪」
ぬいぐるみを抱えて僕に見せる。
そんな姿を見ると、小さい頃の記憶が段々と、蘇る…。
確か、母親に
『神の使いを守る為の、禁断の魔力だからね…。むやみに使ってはだめよ。あなたは、神の使いを守る為に生まれたのだから…。』
と言われた覚えがある。
その時の僕は意味がよくわからなかった。
でも、今はわかる…。
僕はエリンを守る『運命』だったんだと…。
今、はっきりと思い出した。
あの時、『禁断の魔力』を使った理由がもう1つあった事も…。