そうだ…。
あの時は、ただのケンカではなかったんだ…。
遊びでケンカしていたのはたしか…。でもその時、エリンを連れ去ろうとしたヤツがいたんだ…。
僕は必死だった…。
『禁断の魔力』を使ったらどうなるかなんて、考えもしなかった…。
アイツは一体誰だったのか…。
夢中で魔力を最大限にだし、エリンを助けようとしたはずなのに…。
エリン自身、誰かにさらわれるなんて知らなかったのか…。僕がエリンに勝つために『禁断の魔力』を使ったと思いこんでいる…。
片耳は…聞こえなくなった…。
「ハーンってば!!」
「えっ??なっ何??」
「何?じゃないでしょ?話し聞いてたの?」
膨れっ面をして僕の腕をバンバン叩く。
「わるい…。聞いてなかった…。何の話しだっけ?」
「だから〜お祖母様にはどっちのコップがいいかな?って聞いたの!」
エリンの指差す方にいろんなコップが並んでいる。
「てか、今日買わなくてもいいじゃん、明日にしろよ。荷物になるし…。」
エリンの顔がクシャっと泣き顔になる。
(うわっ変な顔。)
僕は思わず笑った。
「あはっ♪笑ってくれた♪」
「えっ?」
「ずっと難しい顔してるから…。でも、笑ってくれたならそれで安心♪」
エリンは笑顔で僕を見る。
エリンが僕を大事に思ってくれているのが良くわかる。
僕はエリンのおでこにキスをした。
ただ、愛しくなって…。
エリンは顔を赤くして、おでこに手をあてる。
「遊ぶ時間がなくなるぞ。買い物は明日にして、今日は思い切り遊ぼう。」
僕はエリンの手を握り、歩き出す。
この時が、長く続くように祈りながら…。