時の流れに身をまかせ

阿部和義  2009-08-30投稿
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「……あなたとは、結婚できないの……」

 彼女から別れ話を切り出されたのは、付き合って二年が経とうとしていた春だった。

 彼女は二人姉妹だったけれど、妹はまだ高校生だ。必然的に婿養子をとらなくていけないことになっていて、僕が長男であるがために両家の関係はうまくいっていなかった。

「そうか……。仕方ないよな」

 時間をかけて両家を説得していたのだけれど、僕たちの疲労は限界にきていた。こうするしか他に方法はないと悟っていたのに、なかなかその一言が言えなかったのだ。

 僕たちはしばらく俯いたまま、ただ時の流れに身をまかせていた。出会うのがもう少し遅かったのなら……。

 それから一年が経った。
 彼女は、職場の同僚と結婚したと風の噂に聞いた。相手は僕と同様に長男のようだ。
 あれから妹が卒業と同時に結婚して、婿養子をとったらしいけれど……。



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