* * * * * *
俺が辞表を提出した次の日、
次長ってヤツと課長ってヤツが、揃って俺の自宅へやって来たのだが、
やはり、アイツは来なかった。
ヤツにとって、俺が退社した事は、後々痛手となるはずだ。
何故ならまた、ストレスのはけ口として利用する、新たなるターゲットを見つけなければならないであろうから。
つくづく、ケツの穴の小さい男だと思った。
彼らが自宅へやって来た時、ちょうど息子達2人も居合わせた。
『リョウ兄。親父が遂にリストラされたってさ。』
『マジ?!リストラなンか?!ダッセー。
ユウ。俺ら、ぜってー親父みてぇな大人になりたくねーよな?!そう思わね?!』
情けない話だが、俺は息子達にとっては、ダメ親父と言う存在だった。
2人共、中学校へ上がる前までは、本当に素直でいい子達だったのだが、
思春期の難しい時期に突入した途端、親子の会話も途絶えがちになり、
俺は、父親としての評価を気にするあまり、いつしか、腫物に触る様な扱いをする様になってしまっていた。
最早俺は、親としての威厳さえ無くしつつあった。
その一方で、そんな息子達との関係と比例する様に、妻との関係も、じわりじわりと少しずつ悪化していった。