私は、かなり、深い眠りに誘われていた―\r
明け方、夢を見た。
逃げても、逃げても、中川が私を追って来る―\r
逃げてる間に、中川との距離は、狭ばまり、行き止まりに追い詰められた―\r
縄で、縛り上げれ、何度と無く、フラッシュが焚かれた。
うなされて、私は、目が覚めた。夢なのか、現実なのか、一瞬、分からなかった。荒い息を整えた時、淳が目を覚ました。
「香里・・・?どうした?」
寝惚けて、目を擦りながら、淳は、言った。
「恐い夢見て・・・。」
「・・・、どんな夢?」
「あの人が、私の事を追い掛けて来るの・・・、逃げても、逃げても、どこまでも。縄で縛り上げられてね・・・。」
淳は、私の頭を撫でた。
「もう・・・、大丈夫だよ。俺が傍に居るじゃんか。心配すんな・・・。な?」
「う、うん・・・。」
私は、凄い汗をかいていた。
淳は、私の背中を優しく擦り、横になる様に、身体を押さえた。
暫く眠れ無かったが、淳の寝顔を見て、安心し、また少しして、眠りに落ちて居た。
朝―\r
焦げ臭い匂いで、目が覚めた。隣に寝ている筈の淳を確認したが、淳は居なかった。私は、半身をベットから起こし、キョロキョロと周りを見渡した。
淳は、キッチンに立って居た―\r
「あっちゃん?何してるの?焦げ臭いよ・・・。」
「起きた?朝飯、作ってやろうと思ってさ。自分で、目玉焼きなんて、焼いた事無いから、焦がしちゃって。」
「私がやるよ。朝ご飯位だったら、作れるから・・・。」
「良いって。一回は、失敗しちゃったけど、もう一回焼いたら、何とか、喰えるもんには、なったよ。」
キッチンの手前に有る、小さなダイニングテーブルには、サラダらしき物と、少し焼き過ぎたトーストとチーズが並んでいた―\r
私は、ベットから立ち上がり、キッチンに立つ淳の横から、手元を覗き込んだ。
「見られたら、出来ねぇじゃんかよ。飯なんて、作れねぇと思って、馬鹿にすんなよ?俺だって、やる時は、やるんだからよ。」
「トースト、焼き過ぎだよ。サラダは、何とか食べられそうだけどね。」
久し振りに、笑った気がした。
「お袋みたいな事言って。黙って座ってろよ。喰って喰えない事無いっての。」
「まぁ・・・ね。」
淳の背中を言われるまま、ダイニングチェアーに座ったまま、見て居た。
淳と、いつか、結婚したら―\r
こんな風に、毎日楽しいんだろうな・・・。
と想像していた。
きっと、私が、落ち込んで居る時、辛い時には、私に替わって、慣れない家事も手伝ってくれるだろう―\r
この時は、幸せだった―\r