淳に全てを打ち明けた日から、二週間が経った―\r
ほぼ毎日、仕事が終わってから、淳と逢った。五年間と言う、空白の時間を取り戻すかの様に―\r
夕飯を食べたり、お茶を飲みながら、何時間も話したり、ただ、朝まで抱き合って居たり―\r
身体の関係は無くても、気持ちは、繋がっている気がした。
八時に仕事が終わり、私は、淳に連絡を入れずに、突然、淳の店に行ってみる事にした。
淳が今春、オープンさせた店は、青山の路面に面した、一等地に建って居た。
ガラス張りの店内からは、灯りが漏れて居たが、午後八時で、店はクローズし、閉店作業を行っている、数人の従業員達が外から見えていた。
閉店している店に、入って行く訳にもいかず、私は、ガラス張りの店の入口の前で、中を覗きながら、淳を探し、様子を伺って居た―\r
「香里さん・・・、ですよね?」
何処かで、聞いた事が有る様な声がした。
それは、一年前、淳が勤めていた店のパーティで、私に、声を掛けて来た、淳の彼女だった。
私は突然、背後から聞こえて来た声に驚き、固まってしまった。
「えっ・・・?は、はい・・・。」
「中に居ますよ・・・。呼んで来ましょうか?」
「良いの、ここで待ってるから・・・。」
彼女は、店内のゴミを捨てに外へ出て来た様だった―\r
「あの・・・。私、まだ淳さんの事、好きだから。」
「でも・・・、新しい彼氏が出来たって、あっちゃんが。」
「淳さんは、何て言ったか知らないけど、私は、諦めて無いの・・・。私の所に、いつか必ず帰って来るから。香里さん、淳さんの事、まだ好きなの?」
一瞬、答えに迷っていた。
殆んど、面識の無い彼女に、私の本音を伝えた方が良いのかを―\r
「それは・・・。」
「中途半端な気持ちで、淳さんと関わるなら、止めて欲しいの。彼は、まだ香里さんの事好きだし、傷付いて、いつまでも、あなたの事を、引き擦ってる女々しい淳さんを、もう見るの嫌なの・・・。」
「私は・・・、中途半端な気持ちであっちゃんに逢ってる訳じゃない・・・。」
「じゃあ・・・、中に入って、堂々と、淳さんに声掛ければ良いじゃない!!」
彼女の言い分も、筋が通っていると思った―\r
彼女に、私の気持ちをちゃんと伝える為にも、そうした方が良い気がした。
「分かった・・・。中に入って良いなら、そうする。」
彼女に、通用口を教えて貰い、鉄で出来た、厚い扉を引いた。
「おぉ・・・、香里。」
私が、店に来るとは思っていなかった淳は、目を丸くして、驚いていた。