妻は、いわゆる潔癖症である。
性格もおとなしく、平和主義だ。
俺の様な気弱なタイプの人間には、普通、キツい女房がつく傾向があるが、
我が家に、その一般論は全く当てはまらなかった。
早い話が似た者同士なのである。
お互いに性格が似ている為、相手の行動パターンや考え方など、分かり過ぎる位分かってしまうのだ。
他人から見れば仲が良く、夫婦円満に見えるのだろうが、
実はそうではない。
俺達は、常にお互いにけん制し合い、相手の出方をうかがっている、いわゆる仮面夫婦なのだ。
妻にとっての、理想の夫でありたかった俺は、結婚当初から現在までずっと、理想の夫を演じてきた。
だが、もう疲れた。
会社に辞表を叩き付けた事も、そんな潔癖症の妻に対する三行半ととられても、
冷え切った俺達の今の関係では、仕方がないと思っての決断だった。