一瞬の浮遊感の後、三人は背中から地面に叩きつけられた。
「いってぇ・・・神善、大丈夫か?」
「あ、あぁ・・・ここは?」
龍次がさっと立ち上がり、周りの木を丹念に見回す。
「外国じゃあなさそうだよ、全部日本の木だ」
「ああ、龍次が言うんなら間違いないな」
龍次は植物に博学で、木の襞や葉の形で、種類を言い当てることもできる。
「でも不自然だ。檜、楢、椚、楠・・・こんなに日本の木が一通り揃ってる場所なんて、そうそうないよ」
(人里離れた樹海、か・・・奴らの縄張りには持ってこいだな・・・)
その時、周りの枝がザワザワと揺れ動いた。
神善と龍次が素早く構える。
「よしなよしな、手は出さねぇ」
「客人だからな」
聞き覚えのある声とともに、何かが飛び降りてきた。
「その声・・・お前ら、さっきの!」
「ああ、お察しの通りよ。ちょっくら、あんた方を試さしてもらったってぇわけだ」
声の主は、艶やかな緑の長髪を後ろで結び、蔦で編み込んだ肌着に絹の羽織りと、口調とはおよそ掛け離れた姿でそこにいた。
「もともと俺達は、人間に化けて都会を歩くのはざらだ。人間ほど見ていて飽きない生き物はない」もう一方は、粗削りの水晶混じりの石を首から下げ、服は熊皮の羽織り1枚。
少し乱れ気味に垂れ下がる前髪の間から、切れ長の鋭い目が覗く。