薄暗い部屋だった。外は残暑厳しいのに、どこかヒンヤリした空気が漂う部屋だった。
「ここへ座れ。」ドスの効いた声の主が言った。坊主頭のいかにも、という迫力満点の方だった。何かが描かれている床の間を背にして座っていた。
良く目を凝らして、床の間を見ると、阿修羅の絵が描かれていた。
私はそれだけで、逃げ出したくなったが、何とか名刺を差し出した。
「丸和マンションの南と申します。よろしくお願いします。」私は裏返りそうな声を抑えて、挨拶した。
「おう。俺はこういうもんだ。」上質そうな和紙の名刺を出した。
これから俺はどうなるんだろう。気が遠くなりかけた。