淳が、彼女とタクシーに乗り、私の前から立ち去った後、私は、足取り重く、淳から預かった鍵の束を握り締め、駅の方へ向かった。
「行かないで!!私の傍に居てよ。別れた彼女なんて、構わないで、一緒に居て!!」
そう言えたら良かった―\r
どうして、止めなかったんだろう―\r
淳は、家に帰って来るだろうか―\r
その事が、頭を余切り、無意識に歩いて居た。
彼女は、淳が、いつか自分の元に帰って来る。と言った。
その自信は、どこから来るのだろう?
「あなたは、淳さんとまだ何にも無いんでしょ?」
そんな彼女の声が聞こえる気がした。
私には、自信の欠片も無かった。
淳は、身体の関係なんか、無くても好きだと言ってくれた。
でも―\r
私は、過去のトラウマを拭い去る事が出来ずに、淳を信じられないで居た。
トボトボと駅まで歩き、電車に乗った。淳の家の最寄り駅で降り、駅前に有る、小さなスーパーマッケットに立ち寄り、夕飯の買い物をした―\r
自分を理由無く、励まし、淳は、必ず帰って来る―\r
と言い聞かせた。何もしないで、待っているのは、落ち着かず、時間だけが過ぎて行く・・・。
そう思い、夕飯を作った。高校生の頃、一度だけ、お弁当を作った事が有った。
肉じゃがを作って、詰めたのを淳が食べた時、見た事の無い笑顔で、「また、作ってくれよ!!絶対な、絶対。マジで旨いよ。」と言ってくれたのを思い出した。
淳の家のキッチンで、料理を作ったのは、初めてだった。
嬉しい気持ちと、帰って来てくれるのか―\r
と言う不安で、頭が一杯になった。
ご飯に、味噌汁、焼き魚に、肉じゃが―\r
全てを作り終えて、部屋の掛け時計を見ると、日付が変わっていた。
携帯電話を見ても、メールも電話も無かった。
また、不安になっていた―\r
電車も、動いていない時間になって来て、益々、落ち着か無くなり、じっとしては居られ無くなっていた。
三十分程が経った時―\r
メールの着信が有った。知らないアドレスからメールが届いた。
誰だか解らず、取り合えず、開封してみると、そこには、短い文章と、パソコンのURLが貼り付けて有った。
『下に有る、URLにアクセスしてみな。香里の可愛い写真が見られるよ。パスワードは、900019。十八禁だから、パスワード入れなきゃ見れないからね。削除して欲しければ、連絡待ってる。 』
背中に、寒いものを感じた。メールは、中川だと内容で、確信した。
私は、気の身気のまま、淳の家を飛び出し、駅前のネットカフェに駆け込んだ―\r