翌朝、部屋の扉をノックする音で、私は目を覚ました。
「沙羅ちゃん、時間大丈夫？」
扉越しに聞こえてくる藤沢さんの声にハッとなり、ベッドの枕元にある時計を見る。
時刻は既に七時半を過ぎているのを見て、私は驚いてしまった。
「いけない！こんな時間になっているなんて…。」
普段は自然と、六時半位には必ず目を覚ましている私だったが、今日は、昨日の疲れからか、起きるのが遅くなってしまったらしい。
急いで起き上がり、扉を開けて藤沢さんに挨拶をすると、私はそのまま、洗面所へと小走りに向かった。
「おやおや、珍しい事もあるモンだねぇ。ボンクラ爺より起きるのが遅いなんて。」
その言葉を聞いている余裕もなく、私は洗面所で顔を洗い、髪の毛の手入れをすると、また、自分の部屋へと戻っていった。
昨日のうちに準備してあった荷物を手にし、今度は玄関へと向かう。
荷物を玄関に置いて、次にキッチンへと向かおうとした時、不意に玄関のチャイムがなった。
私はすぐさま踵を返し、玄関の扉を開けた。
「はい。あ…高野さん。」
やって来ていたのは高野さんだった。だが、今日は彼女一人だけしか来ていない。
やはり、まだ山下さんは見つかっていないのだろう…。
「沙羅ちゃん、おはよ。」
そう挨拶を返す高野さんには、いつもの元気さは見られなかった。
「ちょっと待っていて下さいね。すぐに支度を整えてしまいますので。」
「…うん。」
気分が沈んでいる高野さんの事は気になったが、私は急ぎ足でキッチンに向かうと、軽く食べられそうなものを摘んで口に入れた。
「やっぱり…珍しいねぇ。いつもは行儀いい沙羅ちゃんが、また、そんな風に。」
それに対して私は、「高野さんを待たせるのは悪いですから…」といい、そのまますぐに、玄関へと向かった。
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