その月分の給料はそれまで手にしたことのないような大金になった。
すかさずその女子を食事にさそった。
ふたりのために女子にも飲みやすい軽いウイスキーをキープした。
食べながら彼はおもいあがった考えや思い付きを調子にのって一方的に話した。
彼女はマエカレのことを言葉少なに話した。 医師のタマゴだったらしい。
彼は医者なんかに負けるものかと自分の得意なことをまくしたてた。
彼女もそれに応酬したりもした。
会話はそれなりにもりあがった。
二人は充分に食べ、飲んだ。
店を出て歩きながら彼は切り出した。
「オレと付き合ってください。」
「ありがとう。うれしいけどちょっと無理。」
「えーっ!?なんでムリなの。ほかにスキなやつがいるの?」
彼女は首をふりながら「マエカレが忘れられないの。」
「結局ふられたんだろう。」
「うん。だけど忘れられない。」
「だいじょうぶ!オレが忘れさせてやるよ。」
彼は彼女を軽くだきしめようとした。すぐに彼女に逃げられた。
少し早足になった彼女に追い付き今度は力強くだきしめた。
「オレが幸せにするよ。」
彼は彼女にキスをした。
やわらかいクチビルどうしがふれあった。 つぎの瞬間カレのシタクチビルの内側をかたい4枚の角張ったものにはさまれた。
急激な痛みで目を見開き彼女の眼をみた。 彼女の目も彼の目をにらみつけていた。
彼はクチビルを離した。
ビーバーの前歯も彼のクチビルにかみつくのをやめた。
「思い出にひたっていてもなにも始まらないじゃん。」
「でもダメなの。」
仕方なく彼は彼女を駅まで送って行った。