地図は完成したが、矢口の父親は、頑固で変わり者。
その様な父親が手掛けた地図を、役所を始め、ほとんどの者が、正式な物とは認めず、活用はされなかった。
ところが、昨年の夏に発生した滑落事故で、その地図は活躍した。
古い雪渓と、比較的新しい雪渓の間には、明確な境目が出来る事がある。
役所の地図は、それを一つの塊の様に表記しているが、矢口の父親の地図には、その境目が明確に書かれていた。
更にその下には、地熱による空洞が有る、とも書かれていた。
矢口は、父親の地図を基に、その境目に沿って捜索を続けた。
すると、遭難した人が滑り落ちたと思われる穴を発見したのだ。
矢口は、雪の上に寝そべり、穴に首を突っ込んで叫んだ。
「オーイ、聞こえるか?」
「ここに居まーす。助けて下さいー!」
事故が起きて18時間、無事に救出することが出来たのだ。