インターネットカフェを出て、タクシーに乗り、約束のホテルに着いた。
ラブホテル―\r
目黒に有る、有名なSMホテルだった。
最初に、中川に呼び出されて、逢った場所は、一流ホテル、マンダリンオリエンタルだった。
それから、頻繁に逢う様になってからは、必ず此処で逢った。
ここまで来たら、もう、何も恐い物は無いと思った。
腕時計は、午前二時を指して居た。
伏せ目がちに、ホテルの前で、佇んで居ると、向こうから、車のエンジン音がこちらに近付いて来た。
中川の車、SLKだった。
運転席の窓が開き、中川が私に車の中から、声を掛けた。
「待った?」
私は、静かに首を横に振った。
「車に乗りなよ、駐車場に車入れるから。」
言われるまま、助手席に乗り込んだ私は、無言で、中川の横に座った。
車は、ビニールで出来た暖簾をくぐり、ホテルの駐車場で、中川は、エンジンを切った。
私は、助手席の扉を自分で開き、扉をバタンと閉めた。
「眠い?」
中川は、私に気遣う様な素振りを見せた。
「ううん・・・。眠くない。」
私は、一言だけ、そう答えた。
フロントに入り、中川は、全面鏡張りの部屋のパネルを私に伺いを立てる事無く、押した。
203号室―\r
パネルが点滅していた。
淳は、今、七星と言う、別れた彼女とセックスしている―\r
私の勝手な妄想は、そう決め付けて、トグロを巻き、何度も、何度も、頭の中で、輪廻していた。
それ以外に考える事は、何も無かった。
エレベーターを、二階で降りると素即さと、中川は、部屋まで歩いて行った。その後を、遅れて私も追った。
部屋に入ると、眩しい位、全面が鏡張りだった。
靴を脱いで、一段上がると、数歩歩いた先に、大きなベットが目に入って来た。
淳の顔が、一瞬、脳裏に浮かんだ―\r
私は、直ぐさま、それを消し去った。
中川は、勢いに任せて、目の前の、その大きなベットに私を押し倒した。
「俺が、本当に香里の写真をネットに流すなんて、思わなかったろ?」
「削除して・・・。直ぐに。」
「良いよ・・・。最近、香里が俺の言う事聞かないから、罰だよ・・・。良い娘にしてるなら、そんな事しなかったのに。最近、淳って奴と逢ったんだろ?だからか・・・。そいつに俺の事、話したんだ?そうだろ?」
胸の鼓動が、大きく波打っていた。
「どうして、私が、あっちゃんと逢ってるって知ってるの?」
「俺が誰と付き合ってるか知ってんだろ?麗華が親切に教えてくれるからさぁ。あんまり、俺を甘く見ない方が良いと思うよ?香里。」
中川の言葉に、震えが止まらなかった。