今日から、龍吾とはお別れだ。あの楽しい日々はもう忘れたいと思っていた。
あれから1年余りが経った。
2月13日。
あれからというもの、龍吾からの連絡は一切なくなった。
「いってきます。」
仏壇の前で手を合わせた僕は、学校へ行く。
「お父さん。行ってくるね。」
「あぁ。」
僕の家の様子は1年余りで大きく変わった。
お母さんは半年前、不幸にも交通事故でこの世を去った。
なので、父が僕と一緒に暮らしてくれることになった。
何1つ有り難みはないが。僕の中学校生活も終わりを迎えようとしていた。
僕は市内の私立流通経済大学付属柏高校に合格。家から遠いが、高校受験は終わった。でも…
お母さんが死んだことで、みんな僕に悪口を言うようになった。
『おまえ…母ちゃんいないんだろ。』
『連れてこいよ。』
けたたましいみんなの笑い声。
早く卒業したい…
僕は耐えていた。
何も言えない。母親が死んだことは事実なのだから。
放課後、陽太が、
「あのさぁ。みーくんって、柏の高校行くじゃん。」「うん。それが?」
「実は推薦で受かった。」僕はとても驚いた。
柏の高校は遠いから、受かったのは自分だけだと思っていた。陽太も一緒の高校…単純に嬉しかった。
「な…なんで教えてくれなかったの。」
「驚いた顔。見たかったから〜」
陽太が明るく接してくれたので、自然と笑えた。
「あのさ。それよりさ、いじめ…ひどいよね。」
「うん…」
「親がいなくなるって…寂しいでしょ。」
「だけど生きていかなくちゃいけないし。」
「みーくん…」
陽太はいじめに同情したのか、下を向く。
「大丈夫。あと1カ月もないから。」
「…なんかあったら言って。」
その後、陽太が小声で言った。
「こんなとき…龍吾がいたら…」
「そんな話はもう1年も前のことだよ。」
「ごめん。」
僕はもう、龍吾のことは完全に吹っ切った。だけど、気にかかること…それは龍吾は僕のことを吹っ切っているのか…
僕は龍吾を裏切ったんだ。まだ可能性も十分あったのに。