俺がチンゲン菜を食えなくなった事には訳がある。
あれは忘れもしない入社1年目の、忘年会の席での事。
昔から、上司に媚びへつらう事が苦手だった俺にとって、
こんな酷な行事は無かった。
初めての忘年会という緊張もあってか、何とも辛いひとときだった。
さすがに、俺の真横に座る上司の事は無視出来ず、
俺はそいつに御酌をした。
その時、そいつは言ったのだ。
目の前のチンゲン菜の御浸しを見て。
『お前は、チンゲン菜みたいな奴だ。』
『えっ?!チンゲン菜?!』
意味が分からず、思わず聞き返した俺に、
そいつは、更にこう付け加えた。
『まだまだケツが青いって事だよ!!
ワッハッハッハ!!』
大嫌いな上司に言われた事がショックだった。
その日、俺は悪酔いし、苦しい2日酔いを初めて味わう事となったが、
それ以来、酒を嫌いにはなれなかったが、
チンゲン菜を、2度と口にする事は無かった。