その時、ベットに横たわる私の傍らに有った、鞄の中で、携帯電話が鳴っていた。
「電話・・・。」
淳からかも知れない―\r
さっきの事を、淳の口から、聞きたかった。
何故、お風呂に入っていたのか―\r
私の勝手な妄想を吹き飛ばす様な答えが欲しかった―\r
「淳じゃ無いの?出ても良いよ?でも・・・、俺と居る事がバレたら、THE ENDだけどね・・・。」
「どう言う意味?」
「一年間、こうして逢って来た事が無駄になっちゃうよ?前にも言ったと思うけど・・・、淳って男が、警察に行くなり、誰かに言ったりしたとしても、俺は、痛くも痒くも無いんだよ。香里ちゃんの写真が、世に出回っちゃう。それでも良いんなら、あっちゃんに、助けを求めれば?」
私はそれを聞きき、さっき、インターネットカフェの個室で、自分の辱められている写真を見てしまったのを思い出していた。
鞄に、一度伸ばした手を引っ込めた。
「素直な良い娘じゃん。ちゃんと教えれば、解るんだ、香里・・・。」
中川は、私の首元に唇を這わし、右手で、白いカットソーをたくし上げた。
「いつかの・・・、薬ちょうだい。」
「薬?良いよ・・・。本当は、あまり、使わない方が良いんだけどね。知り合いの医者から分けて貰った向精神薬だから、違法な物じゃ無いけど。」
中川は、自分の鞄のポケットから、薬を取り出し、私の口へ放り込んだ。
数分して、私は、フワフワと宙を浮く様な感覚に陥り、疲れのせいか、酒に酔ったみたいに、眠くなった。
意識が遠くなって行く瞬間の、最後の記憶―\r
中川は、私の頭を撫でていた。
淳が、頭を撫でてくれている・・・。と、私は目を瞑り、自分に言い聞かせていた。
「つ、冷たい・・・。」
気が付くと、私は、ベットの下の鏡張りの床の上で、手を拘束されていた。
身に付けていた服や下着は、ベットの上に、散乱していた。
部屋は、物音一つせず、人の気配すら無かった。
フラフラする、身体を何とか起こし、部屋のあちこちを見たが、中川の姿は無くなって居た―\r
私は、一体何をしているんだろう―\r
涙すら、出なかった。
ただ、後悔と自責の念に駆られるだけだった。
その時、ベットの上に置いたままの鞄の中で、また携帯電話が鳴っていた。
何とか、拘束された両手を外し、携帯電話を取り出し、通話ボタンを押した。
「香里・・・?今、どこに居んだよ?鍵も開けっ放しで・・・。ほんと、今日は悪かった。今、帰って来たんだよ。」
「もう・・・、遅いよ、あっちゃん。」
時刻は、午前五時になっていた。