ブォォォォォ…
バスが遠のいていくのが見える。
「ああ…」
葵は悲嘆の声をあげた。
遅刻だ。
†*†*†*†*†*†
「全く…お前みたいな奴が遅刻なんてどうしたんだ」
「あの…いえ、すみません…」
うなだれたまま謝る葵。
まさか、
”夢のせいです”
なんて言えるはずもなく、1限目はまるまる一時間お説教をされたのであった。
もともとしっかりしている葵なのだから、大目に見る…なんて考えは甘い甘い。
私立星条学院高等学校、
超がつくお嬢様学校である。
遅刻なんて以っての外、
授業中にくしゃみをしただけで教室の外に放り出される。
そんなお嬢様学校の、おかしいほど厳しい教師からたっぷりとしごかれた葵は、
教室に入ってやっと何かが違う事に気付いた。
お嬢様学校といえど、いつもは荒れ放題の教室は
机や椅子がきっちりと整えられ、
前の黒板には
「WELCOME」
という字が大きく書いてあった。
WELCOME?
席に着き、隣の席の親友.奈々に声をかける。
「ねえ今日、なんかあったの?」
「あれ、葵知らないの?…あ、遅刻だっけ」
ニヤニヤしながら話し出す奈々。
完全に面白がってるな、こいつ。
「それ、あんまり言わないでくれると嬉しいんだけど。」
「あーっごめんごめん、なんかさ今日…」
奈々が口を開きかけた瞬間…
キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン.
「やば」
チャイムが鳴り、二人は慌てて前をむいた。
教師が教室に入ってくる。
「きりーつ」
そして、いつものように授業が始まる。
*†*†*†*†*†
つん。
つんつん。
(…ん…………)
つんつん。
誰かが…あたしをつついてる?
とん。
とんとん。
つつく力が少し、強くなった。
……何………?…
あたしに何の用…
奈々……………?
また先生に怒られるよ…
授業中なんだから…
授…………業中…
授業中………
授業中?
え…?あたしは?
あたしは…何してるの…
授業中…
ハッ.
授業中!!!