「花ー、入るぞー」
勇が部屋に入ってきた。
私は入ってきた勇をチラっと見て、またゲームを始めた。
「おっ!オレがこの前レベル上げしてあげたやつ。そいつ強くなっただろ?」
勇はそう言いながら後ろのベッドに座った。
(平常心、平常心……)
私は何度も心の中で唱えた。
「…おい、せっかくレベル上げてやったのに使いこなせてねーじゃん。ちょっと貸して。」
勇がすぐ隣に座ってきて、コントローラを奪われた。
(平常心、平常心……)
でも勇の肩が少し当たっている。そこばっかり気になって思考回路が停止しそうになる。
これはダメだと思い、後ろのベッドに座ろうと立ち上がった瞬間、勇が私の手を握った。
「どこ行くの?」
「え?!後ろのベッドに……」
「ここ座っとけ。」
そう言って無理矢理座らせられた。
(え?どういうこと?)
私の思考回路は停止した。
勇はまた平然とゲームを始めた。
今度は肩どころか膝まで触れている。
「……勇?」
「んー?」
「近すぎない?」
「何が?」
相変わらずゲームに真剣だ。
もう心臓が保たないので、少し横にズレようすると、勇がコントローラを置いてこちらを向いた。