「しのはらは志しに野原、ちひろはひらがなでちひろです」
あれぇ? 俺いつの間に異次元に迷い込んだんだろう?
っていうか、ドッペルゲンガーですか?
「志野原……ちひろ………さん?」
同姓同名……じゃないか、異口同音とでも言えばいいのだろうか?
同じ容姿、同じ声、同じ名前
かすかに違うのは性格………いや、雰囲気か?
いや、あまり違いが分からない。
クローンか?
なるほど、それならありえる。
………いやいや、人間のクローンは法的に問題があるとか無いとか、それ以前にクローンの技術ってここまで進歩してたっけ?
「ついでに趣味とか特技とかスリーサイズとか教えましょうか?」
最後のだけは聞かなくていい。
まぁ、深く考える事はないのかな?
同姓同名だかドッペルゲンガーだか知らないが、同一人物でないことは確かだ。
だって、そうだろう?
世の中には自分と似た人間が3人ぐらいはいるらしいから、別に不思議じゃないよな?
「じゃあ、趣味で……」
「え〜とですね、趣味は………………」
その後、1時間ぐらい志野原に付き合わされた。
訊いてないのに、スリーサイズまで教えやがった。
去り際に、
「貴女とはまた、会えそうな気がします」
なんて言っていた。
そりゃ同じ病院に入院しているんだから、会う気ならいつでも会えるだろう。
まぁ、好き好んで会いたいとは思わないけどな。
………そういえば、志野原と話していても気分が悪くならないな
篠原に似てくるせいか?
それとも、彼女も同じように瞳が見えないからだろうか?
ん?
あれ?
っていうか、
俺って、
何で女の人との会話で気分が悪くなるんだっけ?
それに、
いつから、女が苦手になったんだっけ?