大嶋くんと私は近くの公園のベンチに腰をおろした。
大嶋くんの隣、少しだけ間隔をあけて座る。
ちゃんと足を揃え、両手は膝の上に重ねる。
緊張からか肩は上がりっぱなしだ。
暖かい風が頬をなでた。
公園にたくさん咲いていた桜も今はすべて散ってしまい、代わりに新緑の緑が碧々と生い茂っている。
軽く息を吐き、気持ちを落ち着かせる。
「話したいことがあって…」
大嶋くんが口をひらく。
「は、はい」
緊張のあまり声が裏返ってしまった。
「木村の事なんです」
ズキッと胸が痛んだ。
「余計な事かもとも思ったんですが…最近あいつ元気なくて」
「………」
木村くん。3年になってから同じクラスになった。席が近くて、よく声を掛けられていた。
桜が散り始める頃、木村くんに告白された。
2年の頃から好きだった、付き合ってほしい、と。
私は断ろうとしたが言葉を遮られてしまい、少し考えてみてほしいと言われた。
あれから返事できず2週間が経とうとしている。
木村くんはそういえば書道部だった。
でも大嶋くんと仲良かったなんて、全然知らなかった。
「…木村くんにはちゃんと返事しなきゃって思ってます…」
か細い声、でも少しふてくされたような声だったかもしれない。
私はずっと大嶋くんの顔を見ることができず俯いている。
「木村、すごいイイ奴ですよ。明るくて、誰に対しても優しいですし。ああ見えてすごい真面目なんですよ」
大嶋くんが穏やかな笑顔で言った。
大嶋くんは私の気持ちを知らないんだから仕方ない。
知らないからこんな事を私に言うんだ。
分かってる。
分かってる…
だけど…
「私、木村くんとは付き合えないから…」
俯きながら、またか細い声で言った。
暖かい風が吹いて、木々を揺らした。
「え?何ですか?」
「私、他に好きな人がいるんですっ…」
そう言い捨てて、私は走ってその場から逃げた。
続く