頭を抱えている腕に髪の触れる感触があった。
勿論、自分以外の…。
逃げることも出来ずただ震えていた。
口からは、ひぃぃひぃぃと悲鳴とも呼吸とも言えないような音が漏れ出している。
…何でだよ!携帯も番号もえたじゃねぇかよ!
…何でこんなことになんだよ…誰か助けてくれよ…
心の中で叫んでいると腕を掴まれた。
血の通わない冷たい感触…
相手が生きていない事を実感させられる
「いぃぃぃ〜〜〜〜!!」
恐怖のあまり眼を見開いて叫んだ。
眼の前には女の顔がある…。
…女と目があった…
その瞬間携帯が鳴った。
女の口が動き…
「……許さない……」
女は次の瞬間、スーッと消えていった。
………助かった?
ため息を吐き、思い出したように携帯を手に取った。
電話は彼女からだった。
…もうひとりじゃいられない…
そう思い、すぐに彼女と会う約束をした。
すぐに向かうからと電話を切ろうとした時、アノ女の笑い声が聴こえた気がして背中に冷たいモノを感じた。
車を飛ばして待ち合わせ場所に向かった。
彼女はすでに待っていて、優しい笑顔で迎えてくれた。
少し話した後、彼女の家に行くため車に乗り込んだ。
走り出してから、先程迄のことがまるで嘘のように彼女は無言になってしまった。
「どうしたの?」
不安になりだし聞いてみた。
「………」
それまで無言だった彼女が小さな声で呟くように口を開いた。
「私…ずっと探してた…。あの時…携帯なくしちゃって……」
「え?何いってるの?」
彼女をみると俯いたままでまた話始めた…
「どうして勝手に使ってるの?…私の携帯…返して欲しかった……。もう捨てちゃったんだよね……。」
隣に居るのは彼女じゃない…アノ女だ!!!
身体が震えて頭が真っ白になった…。
女がゆっくりとこちらを向き笑いながら……
「だから……お前も死ね!」
女の腕が首を絞めてきて目の前が真っ白になった。
轟音と衝撃…
…そして女の笑い声…。
……あれから3ヶ月……
酷い事故だったらしい…。乗っていたのは自分一人…。
命は助かったが…右目と両足を失った。
首にはアノ女の手の痕がはっきりと残っている。
アノ女の笑い声が今も耳から離れない。
…もう携帯電話を持つことはない…。
-終-