あの日から、帰る時間をずらして大嶋くんとは会わないようにしている。
あんな態度をとって…
自業自得のくせに。
「…、廣瀬!」
絵を描くことに集中していて、呼ばれたことに気づかないでいた。
振り向くと、そこには木村くんがいた。
「優、私教室戻ってるね。」
事情を知っている花は気を遣って席を立つ。
「ごめん。活動中に…」申し訳なさそうに木村くんが言う。
「大丈夫だよ…。私こそ、ごめんなさい。ずっと返事できてなくて…」
「…返事、もらえるか?」
芯の強い、はっきりとした声で木村くんが言った。じっと目をそらすことなく私を見ている。
「私…」
木村くんの視線に耐えきれず目をそらす。
「好きな人がいて…だから、木村くんと付き合えない…ごめんなさい…」
胸が重苦しく、ギュッと何かに掴まれているような感覚だ。
木村くんを傷つけているんだから、当然だ。
「…分かった」
「ほんとにごめんなさい…」
「じゃあ俺たち友達になろうぜ」
一瞬、訳が分からず私は反応できずにいる。
友達?
「俺、廣瀬のこと応援するからさ!」
満面の笑顔で木村くんが言う。
「だっ大丈夫っ!応援とか…いいから」
「ダメだ!廣瀬が幸せになってくれなきゃ、フラれた俺の立場ねぇじゃん」
「そんな…」
たぶん私は困ったような情けないような顔をしていたと思う。
応援も何も、今は大嶋くんと話せるようになっただけで十分幸せなのに… これ以上なんて…。
「そういう事だから、これからもよろしくな!廣瀬!」
困り果てている私を残して、木村くんは颯爽と美術室を後にした。
続く