アロエ?

サン  2009-09-07投稿
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ミミこと川合美弥香は、川合楽器店の創業者の直系の曾孫だ。グランドピアノでも有名だ。

川合家はもともと、華族の三井財閥と肩を並べる大財閥だったが、終戦後、財閥系は廃止、華族制度及び既得権益庇護は廃止になり、川合家の一族の中には自殺者が相次いだ。

それを心から悲しみ、憂き、逼迫した一族の危機に立ち上がったのが、ミミの曾祖父の川合華一楼(カワイカイチロウ)だった。

華一楼は七人姉弟の末っ子で、長男だった。
跡取りを戦争にだす両親、姉達の悲痛な顔は、華一楼に、強烈に死を覚悟させた。

終戦記念日のちょうど1年前にに赤紙が来て、空軍に配属された。

華一楼が21歳のときだった。すでに家庭をもち、二人の息子にも恵まれていた。

「命はとうに捨てている。雅子、龍伍郎、貫太、愛してる。死んでも、いつまでもそばにいる。」

米駆逐艦撃墜命令がついに出された。

華一楼は撃墜飛行訓練をすでに終え、出撃命令を待つばかりだった。

「出撃」とは即ち死を意味する。

飛行機の燃料は片道しか載らない。
なぜなら帰りの燃料を搭載する意味がないのだ。

「特攻服」
今じゃ暴走族の白い特攻姿を意味するが、そうじゃない。
本当の由来は、「人間爆弾」と言って、物凄い量の爆薬を積み、駆逐艦に体当たりし、沈没させるのだ。

人間一人なんて簡単に、跡形もなく、爆発の瞬間に吹っ飛んでしまう。

みんな出撃前夜に手紙を書かされた。

白い和紙に、黒々とした墨で空白を埋めていく。

華一楼は、
「命だけは大切に、自分の分まで生きろ、決して死ぬな。」
そう最後に書いた。


エンジン音が唸りを上げる。仲間が車輪にあるスト



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