「うわっ、お姉ちゃんやるな!」
アンディの活気に満ちた声が、リビングに響いた。
「うふふ、面白い!」
アンディの隣りで、メアリーも楽しそうに笑いながらコントローラーを両手にテレビ画面に集中していた。
そんなテレビゲームに興じている二人を、ジュリーは近くのソファーに座って見つめている。
「ふぅ、お姉ちゃん強いね。どうして? 」
アンディはコントローラーをテーブルに置き、隣りに座るメアリーを見つめた。
「格闘ゲームは得意なのよ。学生の頃、よく友達とやってたから」
「へぇ〜。僕、友達にはいっぱい勝てるけど、ママとお姉ちゃんには勝てないや」
「うふ、ママ強いの?」
すると、アンディはアイスコーヒーを飲んでいるジュリーを見つめながら、
「うん。凄く強いよ! 何回やっても勝てないんだ。ねっ? ママ!」
ジュリーはアンディの瞳を見つめ、優しく微笑んだ。
「手加減してるんだけどね。でもアンディ、叔父さんに負けた事は一度も無いよね」
「うん。だって叔父さん、弱いもん!」
…それを聞いたメアリーの目が急に丸くなった。
今まで何度もスティーブの戦いぶりを実際に見て、その度に彼の強さを実感してきたメアリーにとってアンディのその言葉はとても衝撃的な物だった。
「よ、弱いの?」
「あははっ。だって、僕に勝った事一度も無いんだよ」
アンディは自慢気に言った。
そんなアンディを、メアリーはとても可愛いく思い、思わずアンディの頭を優しく撫でた。
「実際のあの人は凄く強いのに。うふ、何か可笑しいわね」
「うん。可笑しい。あはは」
そうして二人は、お互いを見つめ合いながら高らかに笑った。
(あの娘。気に入った)
ジュリーは心の中でそう呟き、ゆっくりとソファーから立ち上がった。
そして二人を見つめながら、
「暑いね。アイスでも食べようか?」
その問いかけに、二人は一斉にジュリーに顔を向ける。
「食べる!」
先に口を開いたのはアンディ。
それに続いてメアリーも、
「私もお願いします」
「ふふ。分かった。直ぐ持ってくるわ」
ジュリーは頷き、二人に背を向けて歩き出した。
続く