幼稚園の頃、
君は「海が見たい」と言った。
僕の住む町から海は果てしなく遠い。僕も海を見た事が無かったから、絵本を広げて真似して海を描いた。
君に渡そうと家へ向うと、君は鎌倉に旅行へ向った後だった。
君は本当の海を僕より先に見たんだね。
小学生の頃、
君は「誰よりも早く走れる」と自慢していた。
僕も走るのには自信があったから、どっちが早いか競争する事になった。
ヨーイドンで駆出したけど、君は凄く早くまるで風の様に駆け抜けていった。
やっぱり君の方が早かったね。
中学生の頃、
君は「チビチビ」と僕をからかっていた。
僕は確かに小さかったけど、女子にはけっこう人気があった。だから君の言葉を、そして君を無視していた。
本当は照れ臭いだけだったんだけど、君は悲しそうな顔をしていた。
いつしかお互い話しもしなくなったね。
高校生の頃、
君が突然僕を訪ねてきた。
久しぶりの会話はぎこちなかったけど、君は相談出来るのは僕だけだと言ってきた。
彼氏の事を長々と聞かされるうちに、何だか僕は複雑な気持ちになっていた。
しらない間に君には好きな人が出来ていたんだね。
大学生の頃、
中学の同窓会で君に会った。
君は見違える様に綺麗になっていた。何だか顔が熱くなって、君に話し掛けられずにいた。
君は僕を見つけると、手を振って駆け寄ってくる。
君はいつしか大人の女性になっていたね。
「かず君元気?」
「うん。」
「かず君全然変ってな-い」
「そうか?りかは老けたな。」
「ヒッド-イ……かず君…」
「何?」
「私ね…」
「うん…」
「結婚するんだ。」
「…そっか。」
君はいつだって僕より先を歩いていたね。いつも一緒でいつも隣りを歩いてきたけど。
いつか君に言おうとしてた言葉を酒で流し込む。
とびっきりの笑顔で祝福してあげよう。
やっぱり僕は君に追い付けないや。(笑)
「りか、おめでと〜」
「えっ?かず君泣いてない?」「泣いてね〜よ。バーカ」
「泣いてるくせに。バーカ」(笑)
終り