僕等は死神から、重要な事を聞かされる…。
「運命の女神は、この魔界では、いなければならない存在なんだ。いなくなれば、前のように、龍族が滅びたり、混乱が絶えなくなる。今もそうだ。王の命令で、モイライを人間にしなければならない時、シヴァ様は悩んだ。悩まれている時に、モイライから、言われたんだ…。」
缶コーヒーを口に流し込み、渇いた喉を潤す。
僕もエリンも正座して、真剣に聞く。
「モイライは、私がいてもいなくても、凄い事が起こるって言ったんだ…。」
「凄い事って?」
「………王族との戦争。」
「もう起きてんじゃん。」
ボソッと呟く僕。
死神は気に食わない顔をして睨む。
「バカたれ…もっと衝撃的な事だよ…。」
「………。なんだよ。」
「…モイライは、王族が人間界を乗っ取るだろうって言ったんだ…。」
人間界を………。
でもおかしい話だ。
王の考えは、人間界を見守る為に魔界は存在する。だから、あんなくだらない掟やら何やらある。
王の考えではない…。
「おかしいと思うだろ?」
死神の言葉に僕等は頷く。
「モイライは自分が人間になっても、奈々に託そうと考えたんだ。そして、人間になるには、人間の心臓を体内に入れなければならない。」
「おい…まさか…。」
「そのまさかだよ…。普通なら死んだ人間の心臓を使うんだが、奈々の父がそうしてくれと言ったんだ。本当の事言うと、記憶だけで済んだ話だけどな…。」
僕の横にいるエリンが震えているのがわかる。
何だかやるせない気分になる…。
「生きている心臓を使うのには、もう一つ理由があるんだ…。」
「なんだよ…。」
「それは…、奈々の弟だよ。」
「弟…?」
「奈々の弟は魔力が弱い。いくら女神の血を引いていてもあいつは中途半端なんだよ…。所が、生きた心臓を使えば魔力を高める事が出来る。モイライはそこまで計算してたんだよ。弟が、心臓を体内に入れれば、獣族になれる。」