「けど…他の人間でも良かったんでしょ?なんでそこまでして…。」
エリンは泣きながら死神に訴える。
そりゃそうだ。
別に父親じゃなくてもいいはず…。
「ただ…奈々の父は、『モイライの住む世界を平和にしたい…。僕は愛する人の為に命を捧げたい。モイライが悲しむのは見たくない…。』って言ったんだよ。」
愛する人の為に…。
魔界人よりも、人間の方が強い心を持っている。
僕等は力や妖力はあるけど、心は弱いかもしれない…。
自分が勝てないと思えば、汚い考えで仲間を消していく。
龍族の反乱が起きてから、そうなっていった…。
(ん…?まてよ…?)
「死神…。王ってさ、なんか前より変わってないか?」
僕は疑問点が浮かび上がった。
「さすがハーンだな♪頭いい♪」
「おぉ〜♪何?何がわかったの〜?」
(こいつらバカにしてんのか?)
「あれは、王であって、王じゃないんだろ??」
エリンは目を点にして僕を見る。
「………そうだ。その通り…。」
死神の言葉にビックリするエリン。
「えっ!!そうなの??てか、意味わかんないよ〜!!」
ジタバタするエリンに頭をなでて落ち着かせる死神。
「おい…俺の女に触んなよ…。」
それを見て、僕は思わず魔力を高める。
「怒んなよ〜。ちょっと触っただけだろ〜。」
「きゃ〜♪ハーンがヤキモチ焼いてる♪かわい〜♪」
「…とっとにかく、王は心が変わったか、なんかじゃないのか?なんかさ〜……ん〜なんて説明したらいいんだ?」
頭を抱えて考えこむ。
エリンはそんな僕に頭をなでてきた。
「悩んでるハーンってかわい〜♪」
(俺は人形か!!)
「ハーンの言う通りだよ。王は心を支配されている…。誰にかは解らんけどな…。モイライは全て知った上で、人間になった。シヴァ様もそれを理解した上で…。」
なんか複雑すぎる…。
さすがの僕でも、頭がパンクしそうだ…。
「これからどうすんだよ…。」
「今は正体もわからない…しかも、奈々の子供の事がある。王に奈々の事を悟られては困る…。ハーン、協力してくれるな?」
死神は、真剣な眼差しをしている。
僕は歯を食いしばり、強く頷く。