声が聞こえる…肩を揺らされて目覚めた。声のする方に顔を向ける。そのこには、60代位の親父がいた。
軽く頭痛がする…二日酔いだ。ゴミの嫌な臭いがする…そう、俺は生ゴミを入れるポリバケツに抱き付きながら寝ていた。
自宅に帰って寝る事にした。スーツはヨレヨレで、ネクタイも緩んでいる…一晩、ゴミ入れに抱き付いていた為に臭いまで染み付いている始末…。
幸い、財布は盗られてなかった。時間が気になり、腕時計を見る。まだ、朝の6時過ぎだ。
駅に徒歩で向かい生ゴミの香水を着けた男が電車に乗る…。顔を顰めて乗客は俺を見る。誰も近寄って来ない。そんな奴らを無視して、自宅付近の駅で降りる。駅から自宅までは、徒歩で行ける距離だ。
自宅に着くと鍵を開けて部屋に入る。直ぐに身体に身に着けていた衣服や靴下、下着まで脱ぎ捨てシャワーを浴びる。
シャワーを浴びた後、生ゴミの臭いが取れいない事に気がついた。
「臭ぇ…暫く、この臭いは取れんなァ」
独り言を言いながら、身体に付いている水滴をタオルで拭く。首からタオルを掛けて、トランクスを穿いた後にベッドに入った。
俺が使っている枕の横に、もう一つ枕がある…別れた女が使っていた枕だ。女の為にベッドをセミダブルに変えた所だった。もう、意味が無い…別れた女を思い出す。
「真美…」
別れた女の名前を呟く…情けない事に涙が溢れた。今頃、真美は何をしているのだろうか?そんな事が、頭の中をグルグルと駆け巡る。昨日、老婆に貰った胡桃のペンダントを首に掛けたまま、急に睡魔に襲われて、深い眠りに俺は付いた…。