人斬りの花 27

沖田 穂波  2009-09-10投稿
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死など怖くない。
怖いのはあなたに,
見離されることだけなのです。

5-前 人斬りの花

15年前のことです。
母は,まだ3つの私を置きざりにして,家を出て行きました。

目の見えない私は母の顔を知りませんが,優しく,良く面倒を見てくれて,とても大好きでした。

しかし,
そんな母を追い出してしまったのは,明らかに私のせいでした。

何故母が出て行ったのかは,当時3つの私でさえ理解していました。
その時私は目が悪く,
何をするにも人の手を借りなければなりませんでした。
なので,
母は人より苦労していたのでしょう。
こんな苦労ばかりの生活から逃げ出したい気持ちは,良く分かりますから。

私が記憶している母の最後の言葉は,

『椿が,普通の子なら良かったのにね。』

でした。

父は,出て行く母を引き止めようとはしませんでした。
まるで,こうなる事を予測していたかのように全く動じていなかった。
ただ,
母が居なくなった朝,小さな溜め息をついて私の頭を撫でてくれたのを覚えています。

私は,母が消えて寂しいなどと思った事はありません。
その変わり,母に見捨てられたと言う現実に酷く落ち込みました。
そして父もいつか,私を捨てるのではないかと,不安になりました。

でも父は,私を見捨てる事なく,男手一つで私を約10年間育ててくれました。

不思議とお金には困らなかったし,初めは幸せでした。

しかしこの10年間,
父は殆ど笑わなくなったのです。
目の見えない私にも人の笑顔は分かります。

父は,私の事が重荷なんだ。

いつしかそんな事を思うようになはりました。
そして,
どう人に迷惑をかけずに生きるかを,常に考える様になりました。

しかし,
それは,不可能でした。

ならば,いっそ死んでも良い。

こんな感情が付きまとい始めた頃,
私は,
不思議な人斬りに出会いました。


≠≠続く≠≠



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