孤児院を出ると、そこには荷馬車が停まっていた。立派な馬ではなかったが、手入れのされた良い馬だった。後ろの荷台には、空っぽの木箱が積み上げられていた。
何の仕事をしているのか聞きたかったが、孤児院での噂を思い出し、聞きたくなくなった。
僕はこれから殺されてしまうんだ。何しているかなんて関係無い話だ。
「名前は?」
不意にバフが尋ねてきたので、僕は震える声で答えた。
「…ヨークだよ。ただのヨークだ」
「変な名前だな。喋り方も男みたいだが…女の子だろ?」
「…うん」
女の子だったら何なのだろう。バフの言葉に疑問を感じたが、どうせ単なる余興か何かかと思った。
話が途切れるとバフはヨークを荷台に乗せた。
「ヨーク、これからお前の仕事場に向かう」
されるがまま、ヨークはガタガタ揺れる荷馬車に乗って、僕の新しい仕事場に向かった。
この無愛想な殺人鬼と一緒に。