いけない事とは分っていた。
でもやっぱり
気になる。
好きな人の私生活。
俺は毎晩の様にあるアパートへ通っていた。
1階の3番目の部屋。
そこが彼女の部屋。
音を立てない様に.気配を消して息を潜める。
わずかな隙間から伺う。
「今日はお気に入りのパジャマだね…」
心でそう呟いて.君の愛しい姿を見つめ続けた。
やがて灯が消えて.君は眠りにつく。
僕はそれを見届けると.家路へ帰る。これが毎日の習慣。
別に怖がらせたり.被害を与える気は無いんだ。ただ見ていたいだけ…。
家に着くと携帯が鳴る。
『非通知』
「またかよ…」
ここ最近.非通知で電話がくるようになっていた。
一度出た事があったけど.無言で切れる。
だから俺は出ない。
風呂から上るとまた非通知で電話がかかってきた。
「いい加減にしろよ。」
俺は文句を言ってやろうと.電話に出てみた。
「おい…いい加減にしろよ」
「見てたでしょ?」
「えっ?」
「見てたでしょ?***号室」
「は?」
「知ってるのよ。毎日覗いてるよね。」
「お前誰だよ!!!」
「私はね.あなたのすぐ側にいつも居るの。」
「何言ってんだよ…」
「私が居るのにあんな女に夢中だなんて…。」
「何なんだよ?どこいんだよ?」
「いつも見てるよ。いつも…」
電話が切れて.俺はカーテンを開けて窓の外を見渡した。
誰も居ない。
カタッ
背後から小さく音がした。
振り向くと.押し入れの戸が少し開いてる様に見えた。
ビビりながら一気に開ける。
居ない…。
「フフッ。ソコジャナイヨ…」
ベットの下から白い手が俺に向って伸びていた。
終