「うむ、若者らしいよい返事だ。」
そう言うと、本郷はまた髭をひと撫でして歩きだした。
そして・・・
「ここだ。」
本郷は見るからに重々しい扉の前で立ち止まった。
猛獣でも飼っているのだろうか?まるで何かを封印しているような、おぞましい雰囲気がする。
(いったい何が・・・?)
本郷はポケットから鍵を取出すと、扉の鍵穴に差し込み、ぐるりと半回転させた。
カシィンッ!
乾いた音が鳴り、鍵が解かれる。
「数有る『ホーム』の扉の中でも、これだけは唯一手動でな・・・んっ!」
ゴッ、ゴゴゴゴ・・・
不吉な音とともに、扉は開け放たれた。
「入りたまえ。」
本郷は龍一に中に入るよう、合図した。
「こ、これは・・・」
中に入った龍一の目に飛び込んできたのは、部屋の大部分をしめる程の巨大な鉄の立方体だった。
「『トイ・ボックス』。」本郷も部屋に入り、一言そうつぶやいた。
「トイ・ボックス・・・?」
「側面に『穴』が開いているだろう?」
本郷の指差したところを見ると、確かに立方体の側面の中央に、ぽっかりと『穴』が開いている。
「腕を入れたまえ。それが『儀式』だ。」
「・・・わかりました。」
龍一は『穴』の前まで来ると、その『穴』をよく見た。
腕を入れたら、どうなるのだろうか?
鍵が付いているくらいだ、少なくともただの穴ではないことは分かる。
(・・・考えてもしかたないか・・・。)
龍一は決心した。
(遣り遂げるためにっ・・・!)
「うおおっ!」
龍一は、殴るように左腕を『穴』に突っ込んだ。