「まぁ・・・、兎に角よ、お前は、心配すんな。麗華にも、話す時が来たら、俺が話す。香里は、何も気にしなくて良いからな。もし、中川から連絡が来ても、電話も取るな。何か有ったら、俺に言え、絶対だからな・・・。香里からは、麗華には、何も言わないでくれ、な?」
「うん・・・。解った。」
淳に、中川の事を聞いてからは、色々な事が、頭を駆け巡って居た。
もし、麗華がこの事を知ったら―\r
中川が、また私の所へ来たりしたら―\r
とにかく今は、淳を信じよう―\r
そう思っても居た―\r
「しかし、とんでも無い野郎だな・・・。許せねぇよ。麗華と婚約しておいて、いい歳して、女、何人も這べらしてよ・・・。おまけに、お前の事をもて遊ぶなんてさ。」
「・・・。そ、そうだね。」
「絶対、ただじゃ置かねぇ・・・、マジでよ。」
私は、自分の事だと言うののに、何故か、全く実感が沸かなかった―\r
淳は、右手で拳を作り、左の掌に、ずっと打ち付けて居た。
「あっちゃん・・・?」
「・・・、ん?」
私は、話題を変えたくて、この間、渋谷駅に貼って有った、花火大会のポスターの事をふと思い出し、淳に切り出した。
「今度、花火大会が有るんだって・・・。一緒に見に行かない?」
「花火かぁ・・・。良いな。」
「日帰り旅行の時、花火見に行こうって言ってたのに、結局、行けなかったし・・・。」
「そうだったな・・・。花火なんて、暫く見てねぇな・・・。うん、行こう。いつ?」
「二週間後の土曜日の夜だったと思うんだけど・・・。」
「店、何とか早く切り上げて、行けるようにするよ。今度こそ、約束・・・。」
淳は、柄に無く、小指を出した。
思わず、私は吹き出した―\r
「何だよ、約束って言ったら、これが定番だろ?おかしいかよ?」
「ううん・・・、でも、あっちゃんがそんな事すると、何か面白くって・・・。おかしいよ・・・。」
私もそう言いながら、小指を出し、淳の小指に絡ませた。
「約束な・・・。」
「歌は歌わないの?約束げんまんって。」
「ガキじゃねぇんだからよ。恥ずかしいだろ?」
「それも、そうだね。約束だよ、絶対。」
「あぁ・・・。綺麗だろうな、花火・・・。」
この時は、淳との約束が果たされると信じていた―\r
何も疑わずに・・・。