翌日、その生徒から苦情の電話が殺到。
「香山先生!どういうことですか!あなたのせいでわが校の名誉は…。」
それでも香山は諦めなかった。
ハゲ教頭に言われたから成り下がる。自分のプライドが許さなかった。
「僕は!いじめをなくそうと最大限の努力をしてき…」
しかし、ハゲ教頭に口を押さえられ、
「それが…その結果が暴力かね君…!」
怒り心頭だった。
「きょ…教育委員会に君は行ってもらう!」
「なっ…」
反抗する間もなかった。
「き…君の行動は教育委員会にも漏れている!」
「……。」
「明日、とにかく行きなさい。」
えっ…
香山の教員生活が揺らいだ瞬間だった。
3年4組。
「よし!」
香山はいつもと同じように教室へむかった。
『きょ…教育委員会に君は行ってもらう!』
さっき言われたことを思い出すと、さすがに表情も曇る。
「おはようございます!」「おはようございます…」毎日のことだ。中学3年ともなると、小学生の様に大きなあいさつは全くしない。
生徒達には、教育委員会の事はもちろん隠して、明日出張ということにした。
職員室に戻った。
「オレが…教育委員会に…」
するといきなり肩を叩かれた。
「先生!」
「山田!優太もどうした?」
すると優太が心配そうに言った。
「なんか先生元気ないなって思ったから。」
「いや…大丈夫。」
「先生…」
「どうした山田?」
「僕…聞いちゃったんですけど本当ですか?」
「えっ…」
まさか…香山は息を呑む。山田は不安げな顔になっていく。
「教育委員会に明日行くんですよね?」
「マジで先生…!」
優太は先生を見て驚く。
「うそだろ先生!うそだ…」
優太は激しく先生を揺さ振った。だが…
「…本当だ。」
「先生…」
教育委員会。
そこは簡単に言うと、学校の先生限定の警察署。
悪いことをした先生には、教育委員会より罰が下される。
学園ドラマでよく使われる言葉だ。
「大丈夫だ。きっと戻ってこれるから。」
「先生…絶対に戻って…」幸輔は小さくつぶやいた。でもそれが、最後の言葉だった。
日を改めて、全校集会。
「香山先生は、明日から、教員を辞することになりました。」
「マジかよ…」
いじめ問題に真っ向から立ち向かい、幸輔達にそっと寄り添ってくれた香山先生。
「次から、3年4組の担任は、岩塚博先生です。」
「宜しく。」
この先生が、いじわる先生だった。