「成る程、あんた達が幽鬼族か」
不意に虎雄が口を開いた。
緑髪のほうが、少し驚いた様子で言葉を返す。
「おや、お前さん人間にしちゃあ、中々知識があるじゃないか」
「ああ、妖怪とかは嫌いじゃない。場所が樹海って時点で、あらかた目星はついてたよ。幽鬼族は元来、自然の中で仲間同士、穏やかに暮らす妖怪だってね」
虎雄に感心したのか、熊羽織りのほうが顔をほころばせた。
「いや、ものの見事に知っているな。やはり、お前達を選んで正確だったようだ。・・・申し遅れた、俺は岩鬼。こっちは風鬼だ」
「大和虎雄だ。こっちは、弟の神善と龍次」
「さて、客人ならば、俺達の家に案内しないとな。風鬼」
「よし」
風鬼は頭上を仰ぎ見るように顔を上げると、ピーッと鋭い指笛を響かせた。
途端に、虎雄達の周りで風が渦巻き始め、段々と強くなっていく。
「ちょいときついかもしれねぇが、耐えてくれよ」
風鬼がそう言い終えた瞬間、周りの風が竜巻となって、3人を空へ巻き上げた。
「うわぁーっ!・・・っと、あれ?」
風に煽られる感覚はすぐになくなり、5人は足元に広大な森を見下ろして、空に浮かんでいた。
周りで、まだ微かに風の唸るのが聞こえる。
「す、すげぇ・・・俺達、浮いてる!?」
目を丸くしている神善を見て、満足そうに笑う風鬼。
「どうよ、これが幽鬼族の力ってもんだ。まあこちとら、人間が来るなんざ珍しいんでね。お前さん達が驚くのも無理はなかろうよ」
「でも、落っことさないで運んでくれるんだよな?」
「案ずるな。風鬼は指笛で風の動きを変えられる。しばらく、景色を楽しんでくれ」