僕らのこと?

武津ほずみ  2009-09-13投稿
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母は僕が10歳の時に再婚した。
本当の父親の顔すら知らなかったせいか、今の父をすぐに受け入れることが出来た。

あれは小学校の卒業直前だった。
父に呼ばれた僕はいつもと同じように書斎に向かった。書斎には幾つかの参考書と、一通の手紙が用意されていた。
手紙を読むよう促された僕は、そこに書かれた文字に身を震わせた。
内容は箇条書きで書かれており、それは手紙と言うよりもはや契約書だった。

1.今後6年間、学年3位以内、全校5位以内をもって修学を全うすること
2.部活は運動部に必ず所属すること
3.親には敬意を払い敬語を使用すること
4.高校卒業後は東大へ進学し、政治家の職務につくこと
以上を遵守出来なかった場合、制裁を加えることとする。

「父さん、これなんなの?」
そう言った僕に父は微笑み、僕の頬を殴った。
「何するんだよ!」
そう言うと、もう一発殴り父は口を開いた。
「3番をちゃんと読みなさい。読んだらもう一度私に同じ質問をしなさい」
僕は愕然とした。突然父が変わってしまったと思った。
母にも聞きたくて、書斎の扉を必死に開けようとしたが、鍵がかかって開かない。
「一馬、受け入れなさい。お前は私の息子だ。これは避けて通れない」
「何でだよ、何でこんなことやり始めるんだよ!」
僕が必死に抵抗する度に、父の拳が振り下ろされた。
こんなことなら、中学なんて行かない、大人になんてならなくても良い、と心の底から僕は思った。

だけど、さいか。君に会うためには、やっぱり僕はこの学校に入学することが必要だった。それだけは、唯一良かったと、今日も父に殴られながら僕は思っていた。



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