健也が部屋へ入ってきた。手には包丁。
「ふざけるのもいい加減にしろ。」
「…!」
「死ね。」
その時、
インターホンが鳴った。
「来たな。」
窓から覗くと龍吾がいた。
「健也。オレだけど。」
返事がない。
「オレだけど!龍吾だけど!」
扉を開ける様子もない。
「くそ。健也が何かみーくんにやらかしてんだな。」龍吾は無理矢理扉を開けようとする。でも開く訳がない。
「…しょうがないねぇ。今開けるよ。」
健也が出ていく。自分の部屋の扉の前に、重い鉄骨を何個も置いて。
僕は、いくら扉に体当たりしても、脱出はダメだと、音で分かった。
そこで僕は気を失った。
「…入っていいよ。」
「みーくん、みーくんは。」
「うるせぇよ。」
「ん…?ここ…」
龍吾は、いかにもおかしい部屋を見つけた。
「おい!ちっと勝手に部屋上がんなよ!」
「おい…ここは。」
「……」
「ここに…みーくんがいるんだな。さっきみーくんから電話が来たよ。助けろと。」
「……」
「お前、みーくんに何かしたろ?」
「あぁ、その部屋に束縛してるよ。」
「もうこれは束縛じゃねぇよ。監禁だ。ここにいるんだな。」
「…あぁ。勝手にしろ。」すると、扉の先から人が倒れる音がした。
「みーくん…」
龍吾は、重い鉄骨をどかし始めた。
それをみていた健也は、力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。
「友情って…自分を犠牲にしてでも守っていくものなのかよ」
「お前も…どかすの手伝え。」
「1人でやれよ。」
「あっそ。」
そっけない会話がそこにはあった。
以前は、とても仲のいい友達だったのに…
僕のせいだったよ。健也の言うとおりだった。
僕は部屋で気を失っていたが、夢の中でそう思っている自分がいた。
「ぐあっ。」
「よいしょ。」
と言った龍吾が頑張っている姿が部屋に響いているが、僕には届かない。
何も…届かなかった。
ようやく最後の鉄骨をどかして、扉を開けた。
その光景を見て、龍吾は絶句した。
今まで出したことないような声で、
「みーくん!」
龍吾の体が小刻みに震える。
「よくもみーくんをここまでやってくれたな。」
「……」
「何とか言え!」
「オレは…龍吾がかわいそうだった。それはあの喧嘩だろうとオレは思ったんだ。だから…」
「…大体分かった。」
龍吾はゆっくりとロープを外していく。僕はまだ、気を失ったままだ。
「もうお前は信じない。」