大嶋くんが歩いてくる。
大きく波打つ胸を落ち着かせようと、私はゆっくり息を吐く。
大嶋くんが私の横を通り過ぎる。
…私の方、見ないようにしてるみたいに感じる…。
大嶋くんは木村くんの横まで来て、立ち止まる。
「大嶋、結構書いてたんだな」
「もうすぐ展示会だから。木村もちゃんと練習した方がいいよ」
私は黙って二人の会話を聞いている。
「俺さ、廣瀬と友達になったんだよ!な!廣瀬」木村くんが変わらず明るい笑顔で私に声を掛ける。
「う、うん」
私が頷くと木村くんはまた嬉しそうに笑った。
「そうなんですか。友達になったんですか」
やっと、大嶋くんが私の方を向いて、笑った。
胸が締め付けられそうだ。
嬉しそう。大嶋くん。
何もできていない自分が本気で嫌になる。
途中まで3人で歩いて帰った。
木村くんが色々話しかけてくれたけど、正直あまり記憶にない。
大嶋くんのことで、胸がギュッとされている感じだった。
途中で木村くんと別れて、大嶋くんと二人で歩く。
どちらからも声を掛けず、ただ、並んで歩いている。
続く