明るく光る宵の明星、赤く空が光輝く時、貴方の過去を思い出しませんか。
遠い思い出の中にしまわれた、実在した足取り…
何時もの通りを、一つ角を曲がり間違えたのか、ビルが立ち並ぶ通りから、古びた家並みが連なる通りに来てしまった。
「はて、こんな所に丸く赤いポストが有るけど、やけに新しい感じがするなぁ」
更に先に進むと、小さい頃に、通っていた1銭菓子屋が有った。
中を除き込むと、昔のままだ。
驚きと不安の中で、店にいた歳老いた店番を探してみたが、誰も居ない。
懐かしさが、胸一杯に広がり涙が溢れ落ちた。
あれから40数年かぁ、色々有って此処まできたんだなぁ〜。
戻りたい一心で、タイムスリップしたのだろうか。
考えてみたら一向に解らない。
「おばちゃん〜」と呼んでみると、中から返事が聴こえた。
我が耳を疑った。
「叔父さん〜困るなぁ」
店の中から出て来たのは、20代の男性。
「今は何時の時代ですか」と取り敢えず聞いてみた。
「困るよ!勝手に入って来て、映画のロケ現場なんだから」
昭和30年代の映画の撮影らしい、一時の夢を貰った事にしよう。
男の涙は笑顔に変わっていた。