「オヤジが、自分で自分の居る場所を教えてくれたんだ」
2人は、父親に向かって、手を合わせた。
「オヤジ!直ぐに引き上げてあげるからな」
矢口がそう言うと、野崎も頷きながら、スコップを手に持った。
その時「グオーン、グオーン!」と言う音と共に、さっきの地震とは違う、足元の揺れを感じた。
2人は慌てて、固い雪渓の上に避難した。
どうやら、雪渓の下で、何かが起こっている様だった。
「オヤジさんが、怒ってるのかな?」
「そうかもな!」
矢口はそう言うと、父親が居た穴を、再び覗き込んだ。
「ウオー!」
その声に驚き、野崎も覗き込んだ。
「ウワー!」
2人が見た光景は、地獄その物だった。
新しい雪渓が、内側で大量に崩れたらしく、水位が上がっていた。
そして、2人が目撃したのは、矢口の父親だけではなく、水面で揺れ動く無数の遺体だった。
2人は驚き、腰を抜かして、その場所に“ヘナヘナ”と座り込んでしまった。