お見送り。
私たち吹奏楽部は、名門高校の吹奏楽部を
送るべく、校門まで出た。
「はあ・・・。」
突然の出会いと、緊張したひと時の時間、
彼の優しい笑顔と、楽器を鳴らす時の横顔。
全てがフラッシュバックする。
なんで、今日始めて会った人のことで
こんなに切ない気持ちになってるんだろう・・・。
そんな疑問を抱えながら、彼を目で追っていると、
また、私の視線に気付いたように彼が振り返った。
すると、私のように歩みよってきた。
そして、彼は私に小さい白い紙を差し出してきた。
「え・・・?」
どうしていいか分からず首をかしげていると、私の手を取って
手の平にその紙を置いてきた。
「これ、俺のアドレス。まだ教えたいことがイッパイあるからさ。
まあ、とにかくメールして!じゃね。」
そう言って、彼は走って団体の中に紛れて行ってしまった。
「ありがとうございます・・・。」
聞こえるはずも無いのに、小さくお礼を言った。