近所のスーパーの惣菜売り場でパートとして働く妻が帰宅するのは、
いつも大体夕方の4時頃だ。
俺は、妻の帰宅時間に合わせて自宅へ向かう。
公園と職安を行ったり来たりして時間を潰すのも、ひと苦労である。
せめて仕事が決まる間位、家で掃除や洗濯など、家事の手伝いをしてみようかとも考えたが、
それだけは、やめてほしいと、妻に懇願された。
一家の大黒柱が、真っ昼間からぶらぶらしている所を、
近所に知られるのが嫌なのだそうだ。
いつもの様に、重い足取りで帰宅し、リビングへ向かう俺に、
なぜか重い空気がのしかかる。
ふと、部屋を見渡せば、妻が独りテーブルの上に肘を付き、
両手で顔を覆っていた。
いつもと違う空気に、何かがあったのだと察し、
俺は、妻に静かに尋ねた。
『ユキエ。どうした?!何かあったのか?!』
しかし妻は、すぐには答えず、
やっと口を開いたのは、俺が3度同じ質問をしてからだった。
『‥‥ユ‥ユウが‥‥‥‥‥。』
『ユウがどうしたと言うんだ?!』
『ユウが‥‥私に、クソババァって‥‥‥‥‥。』