何か…しゃべらなきゃ。
そう思うほど、言葉が出てこない。
言葉が浮かばない…。
「廣瀬さん…」
大嶋くんが、沈黙を破る。
「この間は、すみませんでした。僕が口を出す事じゃなかったですよね。本当にすみません…」
私の方を向いて、大嶋くんが深々と頭を下げる。
「そんな…そんな事ないよ。だって大嶋くん、木村くんのこと心配して、私に声かけてくれたんだもん。謝ること何もないよ」
「でも…避けられてる…気がしたから…」
ドクンッ
…大嶋くん 気づいてたんだ。
「避けてなんか、ないよ。最近、絵の方が進まなくて…」
「本当に?」
「本当に」
沈黙…。
「よかったです」
大嶋くんがホッとしたように笑顔を見せる。
私も笑顔を見せる。
自分の気持ちが変わってきているのが分かった。
大嶋くんと話せるだけで幸せ。
大嶋くんが私を見てくれるだけで幸せ。
大嶋くんの近くにいられるだけで幸せ。
…なんて。もう無理かもしれない。
私の気持ちを知らずにいる大嶋くんの言葉が、こんなにも、苦しい。
気をゆるめたら、泣き出してしまいそう。
今までずっと遠くから見つめているだけだった。
今はその時よりも、苦しい。
前のようには戻れない。
戻れない。
私の気持ちを大嶋くんに知ってほしい。
続く