龍吾はロープをゆっくりと外しながら言った。
そして僕をおぶり、救急車を呼んだ。
きぬ医師会病院。僕のお父さんも駆け付けた。
「岬…」
心配しているようだ。
まだ中学生の龍吾だが、医者に特別に病気の現状について教えてもらった。
「まぁ…簡単に言えば精神の病気だな。ショックや何か酷いことを言われると、軽くうつ状態になったり、気を失ったりする事がある。今が最悪の気を失っている状態だよ。もしかして君…何か酷いことを言ったかい?」
「いえ…もし言っていたらここに来てませんよ。」
慌てる龍吾に、
「ハハハハ。君がそんな人だとは思わないからね。大丈夫だよ。」
そして医者は龍吾の肩を叩き
「おそらく岬くんは、君を頼りにしているよ。これからは君が、岬くんを守ってやってくれ。」
「…はい!」
力強く頷き、病室へ行くと、
「おい!」
すくむ龍吾。
「お前が岬をここまで追い込んだのか。」
「えっ……」
「……ハハハ。びっくりしたか」
「おじさん…?」
「岬さ…。よくオレに言うんだ…。」
心を入れ替えたんだ…
龍吾は安心して聞いた。
「なんて言うんですか。」「龍吾は僕のヒーローだって。」
「ヒーロー…ですか?」
「あぁ。前は岬をバットで殴ったり、暴力がこいつを育てると思ってた。が、君がオレを変えてくれた。」「あ、あざーす。」
龍吾は胸を撫で下ろした。「これからもずっとみーくんを支えてほしい。だが、柏市へ引っ越すのも高校のせいで考えててな…」
そこは、受けとめるしかない。
「ここから柏の高校までも、電車で行くことになる。金もどれくらい掛かるか分からない。」
「…そうですよね。」
「ごめんな、高校の関係で引っ越すことに…」
「…」
「こいつにも、辛い思いさせるが、自分で選んだ高校だ。1人友達もそこに行くみたいだし、心配ないって言ってた。」
「……そうですか。」
「3月10日に、引っ越す。」
伯父さんは、引っ越し先の住所を教えてくれた。
「つくばエクスプレスの、柏の葉キャンパスと言う駅の目の前に建っているマンションに住むことになった。B棟の702号室。良かったら、遊びにこい。こいつも喜ぶよ。」
「はい…絶対行きます。」僕は、目を開けなかった。ただ、涙が一筋、ほおを伝った。
別れの日が…近い。