夕方になる時間が早くなって、自転車では少し寒くなってきた。
ドアノブの金属もひんやりしている。鍵はあったかいまんまだ。
こないだまで家に着いたらすぐにクーラーを着けていたのに、今はそんな気持ちにはなれない。
ゆかりは、お湯を沸かして紅茶をいれた。
10才の時、ゆかりはママを亡くして、今はパパと妹と3人暮しをしている。
紅茶を飲んだ後、朝に干した洗濯物を取り込んでから、ゲームを始めた。
妹は部活で夜遅くまで帰ってこないし、晩ご飯はパパの仕事だ。ひまだ。
「寝よ。」
ゆかりはソファーに寝転がった。
――ピンポーン――
しばらく寝ていると、インターホンが鳴った。
「はい、今出まーす。」
ゆかりは眠くなり欠けた目をこすりながら、ソファーから降りた。
――ピンポーン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポーン――
ウザイくらい鳴らしてきた。
「あん、もううっさいな!!」
怒鳴りたい気持ちを押さえながら、ゆかりはドアを開けた。
それがゆかりと輝の、初めての出会いだった。